「法人化すると、社会保険料が高くなるから損だ」
「いや、マイクロ法人で役員報酬を月5万円にすれば最強だ」

ネット上には、このような極端な情報が溢れています。
私は元システムエンジニア(SE)の税理士として、これらの情報に違和感を抱いてきました。

「計算ロジックがブラックボックスなまま、極端な結論だけを信じていいのだろうか?」

そこで今回、エンジニアとしての技術と、税理士としての知識を掛け合わせ、「嘘のない、完全透明な法人成りシミュレータ」を開発・公開しました。
ITフリーランスの皆様が陥りがちな「目先の手取り最大化」の罠と、本当に目指すべき「資産形成の正解」について、まずは実際に計算して確かめてみてください。

法人成りシミュレーション

簡易版 (30秒診断)
詳細版 (プロ設定)
万円
40歳未満
40歳以上
万円

💡 シミュレーション結果とアドバイス

項目 個人事業主のまま 法人化後 差額 (メリット)
総資産増加額 (手取+留保+年金積立) 0 0 0
税金コスト 0 0
社保コスト (掛け捨て分) 0 0
社保資産 (年金積立分) 0 0
法人内部留保 0 0
個人手取り 0 0
📋 税金・社会保険料の詳細内訳を見る
区分 項目 個人事業主 法人化
※計算の前提条件・仮定
  • 消費税は考慮していません(免税・課税の判定は含みません)。
  • 所得税は「2025年改正(基礎控除132万円以下95万円〜)」を適用しています。
  • 住民税は「2026年基準(基礎控除2400万円以下43万円)」を適用しています。
  • 個人住民税の所得控除は、基礎控除を除き所得税と同額と仮定しています(調整控除は考慮外)。
  • 個人事業税は、青色申告特別控除前の所得から事業主控除(290万円)を控除して計算しています。
  • 国民健康保険料は「東京都大田区(令和7年度)」の料率・限度額を使用しています。
  • 社会保険料(法人)は「協会けんぽ東京(令和7年度3月分〜)」の料率を使用しています。標準報酬月額の等級表ではなく、料率×年収で計算しています。
  • 厚生年金保険料の70%を「将来への積立資産」、国民年金保険料の全額を「資産」として評価しています。
  • 法人税等の計算には、法人税、地方法人税、法人事業税(所得割)、特別法人事業税、法人都民税(法人税割・均等割)を含みます。
  • 簡易版の役員報酬は「事業利益の80%」で自動計算しています。
  • 法人の内部留保が赤字(マイナス)の場合、総資産増加額から減算しています(グラフ上は0表示)。

数字だけでは見えない「法人成りのメリット・デメリット」

シミュレーション結果はいかがでしたか?
計算結果で「手取り」や「資産」の金額差を把握できたと思いますが、法人化の判断には「金額のシミュレーションには表れないメリット・デメリット」も非常に重要です。

特にITフリーランスの方が知っておくべきポイントを整理しました。

【メリット】信用力と経費の範囲が広がる

  1. 社会的信用の向上(取引・融資)
    「株式会社」や「合同会社」になることで、対外的な信用力が増します。大手企業との直接取引(口座開設)が可能になったり、住宅ローンや事業融資の審査において、個人の確定申告書よりも法人の決算書の方が評価されやすい傾向にあります。
  2. 「経費」にできる範囲が広がる(社宅・退職金)
    個人事業主にはない、法人特有の制度を活用できます。
    • 役員社宅制度: 自宅家賃の大部分を「会社の経費」にできるため、個人の手取りから支払うよりも税効果が高くなります。
    • 生命保険・退職金: 将来のための貯蓄を、会社の経費として積み立てることが可能です。
    • 出張手当: 規定を作成することで、出張時の日当を経費計上できます。

【デメリット】事務負担とコスト、自由度の変化

  1. 事務手続きと維持コスト(税理士報酬)
    社会保険の加入手続き、年末調整、複雑な法人税申告など、事務作業の難易度が格段に上がります。そのため、税理士への依頼がほぼ必須となり、年間数十万円〜の税理士報酬(コスト)が発生します。
    しかし、これは「面倒な作業をプロに任せ、ご自身は本業の売上アップに集中するための必要経費」と割り切る考え方も重要です。
  2. 役員報酬は自由に変更できない
    個人事業主のように「今月は儲かったから生活費を多めに使おう」ということはできません。役員報酬は1年間の金額をあらかじめ決める必要があり、原則として期中に変更できません。また、原則として役員への賞与(ボーナス)も自由には出せません。
    一見不自由に思えますが、これは「会社のお金と個人の財布を明確に分ける」ことになり、結果としてどんぶり勘定から脱却し、計画的な経営ができるようになる側面もあります。

なぜ、既存のシミュレーションは「しっくりこない」のか?

ここからは、今回開発したシミュレータの「計算ロジック(こだわり)」について解説します。
世の中にあるシミュレーションツールの多くは、以下のどちらかのパターンに陥りがちです。

  • 「社会保険料」を無視している
    税金(所得税・法人税)だけの比較で「法人化すればこんなにお得!」と煽るタイプ。実際には社会保険料の負担で手取りが減ることも多く、不誠実です。
  • 「社会保険料」を全額コスト(捨て金)扱いしている
    「支払額=損失」と計算するため、「法人化は損」という結論になりやすいタイプ。

しかし、現実はもっと複雑です。
厚生年金は、支払った分だけ将来の受給額が増えます。健康保険には、家族を扶養に入れることで世帯全体の保険料を下げる効果もあります。

これらを単純な「コスト」として切り捨てて良いのでしょうか?
本シミュレータでは、ここにあえて「資産性(積立)」という変数を導入しました。

シミュレータのこだわり:社会保険料は「コスト」か「資産」か

本ツールでは、独自のアルゴリズムに基づき、以下のように計算しています。

1. 厚生年金は「7割が資産、3割がコスト」
厚生年金保険料は、決して高いだけの税金ではありません。国民年金と比較して、以下のメリットがあります。

  • 老齢年金の上乗せ: 支払った保険料に応じて、将来受け取る年金額が増えます。
  • 遺族年金・障害年金の充実: 万が一の際、ご家族への保障が国民年金より手厚くなります。

これらを踏まえ、本シミュレータでは「厚生年金保険料の70%」を「将来への積立資産(プラス財産)」として評価し、グラフに可視化しています。
(※平均寿命などを考慮し、安全側に倒して残り3割を掛け捨てコストとしています)

2. 健康保険の「セーフティネット」効果
ご家族(配偶者やお子様)がいらっしゃる場合、法人化して社会保険の扶養に入れることで、ご家族分の国民健康保険料負担がゼロになります。
これは、キャッシュフロー上で非常に大きなメリットとなります。

「マイクロ法人(二刀流)」スキームへの懸念

SEO(検索)で「法人化」を調べると、「マイクロ法人を作って役員報酬を月額5万円程度に抑え、社会保険料を極限まで安くする」というスキーム(いわゆる二刀流)がよく紹介されています。

確かに、目先の計算上は手取りが最大化するため、ハックとしては優秀に見えるかもしれません。
しかし、「事業拡大を目指すエンジニア」にとっては、大きな足枷(リスク)になる可能性があることを知っておいてください。

⚠️ 極端な低報酬設定のリスク
  • 金融機関からの「信用」が得にくい
    住宅ローンや事業拡大のための融資を受ける際、金融機関は「個人の所得」や「法人の適正な利益」を審査します。極端な低報酬・低利益運用は、「返済能力が低い」とみなされるリスクがあります。
  • 「退職金」の枠が使えなくなる恐れがある
    将来、法人に溜まった利益を個人に移す際、最も税金が安いのが「役員退職金」です。しかし、退職金の適正額は「引退時の報酬月額」をベースに計算されます(功績倍率法)。報酬が低すぎると、退職金として認められる非課税枠が極端に小さくなり、出口戦略で困ることになります。
  • 年金受給額が減る
    支払う保険料が減るということは、当然、将来受け取る年金も最低ラインになります。

当事務所では、ルールの隙間を突くような運用ではなく、「事業を成長させ、堂々と資産を増やす」ための、王道の法人化を推奨しています。

「最適化ボタン」のアルゴリズムについて

詳細版シミュレータに搭載した「✨ 手残り+資産が最大になる金額を自動設定」ボタン。
これは、私が元SEとして最もこだわった機能です。

単に税金を減らすのではなく、以下の3つを合計した「トータルの資産(Total Wealth)」が最大になる役員報酬額を、プログラムが総当たりで計算して提案します。

  1. 個人の手取り(税・社保引き後)
  2. 法人の内部留保(税引き後)
  3. 年金積立益(厚生年金の資産価値)

さらに、「会社を赤字(資本の食いつぶし)にしてまで給与を払う設定は除外する」というロジックを組み込んでいます。銀行融資への影響も考慮した、経営者として「健全な最大値」を瞬時に算出します。

おわりに:ツールはあくまで「地図」。重要なのは「経営判断」です

このシミュレータを使えば、現在の数字上の「最適解」はすぐに出ます。
しかし、実際の経営では、今の数字だけでなく「これから事業をどうしていきたいか」という視点が欠かせません。

  • 今は一人社長だが、将来的にはチームを作って規模を拡大したいのか?
  • 拡大はせず、高単価な専門家として利益率を追求し続けるのか?
  • いつか事業売却(M&A)や事業承継を考えているのか?

それによって、役員報酬の決め方や、内部留保の残し方は全く変わってきます。

シミュレータで概算を掴んだ後は、ぜひ「事業の成長戦略」を含めた詳細な設計をご相談ください。
IT業界特有の商習慣を理解した税理士として、面倒な税務・手続きはすべて引き受け、あなたが本業で最高のパフォーマンスを出せるよう、裏側から緻密にサポートいたします。

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