ここでは会計事務所向けITサポートの事例として、消費税検証シート自動作成について少し具体的にお伝えします。
少量ではありますが画像を交えて紹介するので、事例をイメージできるかと思います。
なお、会計ソフトには弥生会計の他、マネフォ、勘定奉行、PCA会計などを使用しておりました。
今回の説明では弥生会計を用います。
他の事例などはこちら↓(簡単にご紹介しています)をご参照ください!
消費税検証シート自動作成の概要
勤務していた税理士法人それぞれで検証シート作成の自動化を求められました。最初の事務所はメンテナンス、後の事務所は新規開発です。
そもそもシートを作成する目的はレビュー用です。
勘定ごとの課税区分、本体、消費税の金額などを出力して、「なぜ、この勘定に課税取引があるの?」「なぜ帳簿の消費税が10%から逸脱しているの?」等を検証します。
もちろん会計ソフトで検証することも可能ですが、会計ソフトの消費税出力物は役割ごとに複数に分かれます。
複数の出力物を一つにまとめあげることで、レビュアーは会計ソフトを起動することなく俯瞰して検証することが可能となります。
勘定奉行や弥生など、多くの会計ソフト向けに対応しました。
入力と出力(何を元に何を作成するのか)
当たり前ですが、出力は消費税検証シートです。2つのイメージをご紹介。
一方、入力は弥生の場合2つ。試算表と科目別税区分表です。
出力1(科目別検証データ)
こちらが目的のメインです。
試算表の科目の並び順に、科目+税区分ごとの税込、税抜、消費税を出力します。
赤枠で囲っている「福利厚生費」の場合、
- 税区分は税率10%と軽減税率8%の2つ、
- 税率10%について、福利厚生費139,698円、仮払消費税等13,958円(帳簿)であり、
- 税込から割戻した消費税等13,969円(理論)、消費税等の帳簿/理論のズレが1円
であることがわかります。
通常はズレが少額のはずなので、多額のときは会計入力に誤りがないか確認することとなります。
また、今回のイメージにはありませんが、右端に「コメント」欄を設けます。
ここに、
- なぜ消費税等のズレが大きいのか、
- なぜ(通常は課税の科目なのに)対象外が計上されているのか、
等をレビュアーが正否を判断できるように、担当者が補足します。
出力2(申告基礎データ)
こちらは消費税申告ソフトに入力するための情報です。
消費税の達人には基礎データ入力の画面があります(ミロクもあったはず)。
これに税区分ごとの税込金額を入力すると、概ね消費税申告書が作成できます。
なお、弥生会計の場合、消費税集計表を出力すれば良いのですが、消費税率ごとに切り替える必要がありますし、値のコピペも面倒です。
勤務先の1社目では、申告基礎データの出力にとどまらず、消費税申告書(っぽいもの)まで出力していました。
これは、「消費税申告ソフトが絶対正しいとは限らない」ために作成している、と教わりました。
また、申告書は複数ページに情報が跨るのに対し、情報量が少ないためレビュアーが検証しやすいことも出力の目的だったようです。
入力1(試算表)
入力2(科目別税区分表)
従来の消費税検証シート作成
勤務先の1社目では既に自動作成マクロは作成されており、軽減税率対応へのメンテに対応しました。
一方、2社目では、担当者全員が「手動」で検証シートを長時間かけて作成していました。
当然、会計に修正が生じた場合、新たな手間も発生します。
事務所として、作成コストがかかり過ぎる課題は認識されていたため、自動化の仕組みを作成することになりました。
見直した消費税検証シート作成
弥生会計にて、入力の2つ(試算表、科目別税区分表)をcsv形式でエクスポート。
このcsvを入力として、Excelマクロを実行します。
そうすれば、目的の消費税検証シートのできあがり。
従来の手動作成が重荷だったらしく、マクロ提供により多くの人に喜んでもらいました。特にベテランさん。
使用したIT:Excelマクロ
消費税検証シートの自動作成のために使用したIT技術はExcelマクロ。
Excelマクロは舐められることも多いのですが、立派なプログラム言語です。
他のプログラム言語で達成できることの多くは、Excelマクロでも実現できます(効率的に組めるかは別問題)。
また、本格的なシステムを作るわけでなければ、メンテ性も悪くないです。
他の人が将来メンテできる可能性も(他の言語よりは)高いでしょう。
考察(当時のやり方は最適?)
2社目に転職した初期に、この作業を任されました。
出力物のイメージはわかるのですが、どの程度まで気の利くものを提供すべきか、わからない状況でした。
そのため、できるだけ機能的に丁寧に作成しましたし、誰かがメンテできるようにも作成しました。
結果としては、やり過ぎだったかなと。
どの程度の落としどころにするのか、会話できる相手の存在は必要です。
ITの仕掛けを作成するとき、仕様を整理(要件定義)できる相手の存在は必須ですね。
なお、技術的にはExcelマクロで十分だったと認識しています。
まとめ
会計事務所におけるIT実績の一つとして、消費税検証シートの自動作成(Excelマクロ)を紹介しました。
消費税検証シートを作成している事務所の人は、業務効率化を果たせることをイメージできたのではないでしょうか?
同様なシートを作成していない人の場合、今回の事例は
- 複数の情報(試算表、科目別税区分表)を一つ(検証シート)にまとめる
- 関数を一括して埋め込む(例えば、消費税等の理論値)
ことのできる事例として理解して頂けたなら幸いです。
この事例に限らず、会計事務所のITサポートにご興味ある方。
お問い合わせ頂けますと幸いです。
「仕入高」を見ると、消費税等のズレが多額です。
これは単に、使用している弥生会計のサンプルデータが「別記」入力(内税入力ではなく、消費税等の仕訳行を明に入力)しているから。
通常は、内税(税込)入力しているケースが多いと思いますので、気にしないでください。
勤務していた2社では内税入力でしたので、問題ではありませんでした。