ご夫婦で働いている場合の所得分散。
個人事業主の場合、奥様に給与支給せず、ご主人のみ確定申告なさっていませんか?
会社員と違って社会保険の扶養メリットこそありませんが、個人事業主の場合でも奥様に給与を払うメリットはあります!
ご参考になれば幸いです。
税額をシミュレーションするため、以下の前提を設けています。
・ご夫婦だけで経営
・ご主人40歳、奥様35歳
・扶養親族(子など)なし
・保険料(国民健康・国民年金)は世帯分をご主人が支払う
・住民税の課税所得は所得税と同じ
・国民健康保険料は東京都品川区ベース
・復興特別所得税は金額が小さいため無視
・定額である住民税(均等割)は無視
・所得290万円超過した場合に発生する事業税は無視
・青色申告特別控除額65万円を受ける
・青色事業専従者の届出書を提出する(奥様は他で働いていない)
国民健康保険料は東京都品川区ベースで計算しています。
東京都23区は大きな違いはありません。
しかし、自治体により保険料の額は意外と大きな差があります。
負担が大きい自治体の場合は、今回ご紹介したケースよりも所得分散の効果が大きくなります。
結論:個人事業主も所得分散しよう!
先に結論を。
個人事業主の場合も所得分散(奥様に給与を払う)することにメリットがあります!
ぜひ所得分散を検討しましょう!
メリットがある理由は以下です。
- 給与所得控除を発生させれば世帯全体の所得が小さくなる
- 各人の所得を抑えると所得税率が小さくなる
- 世帯全体の所得を小さくできると住民税が(国民健康保険料も)減る
- 給与所得控除額の方が配偶者控除よりも大きい
理由を見ても、意味がわからない方が多いと思います。
実際の事例で、所得分散のメリットを確認しましょう!
シミュレーション事例
所得600万円のケースにて、所得税・住民税・保険料を試算します。
ここで、所得とは収入のことではなく、経費をマイナスした金額であることに注意してください。
また、所得600万円は青色申告特別控除65万円を控除する前の金額です。
給与なし:税金等は約170万円
ご主人が奥様に給与を支払っていないケースです。
このとき、以下となります。単位は円です(以下、同じ)。
- 所得(ご主人):5,350,000
- 課税所得(ご主人):3,377,000
- 所得税(ご主人):253,100
- 住民税(ご主人):337,700
- 国民健康保険料(世帯全体):716,468
- 国民年金保険料(世帯全体):396,480
- 所得(奥様):0
- 課税所得(奥様):0
- 所得税(奥様):0
- 住民税(奥様):0
- 計(所得税+住民税+保険料):1,703,748
所得(ご主人)が600万円でないのは、青色申告特別控除65万円を控除しているから。
所得控除には、基礎控除、保険料の他、配偶者控除38万円のみを含めて計算しています。
この給与なしのケースをベースに、他の事例で比較してみます。
給与100万円:20万円以上もメリット
ご主人が奥様に給与を100万円支払うケースです。
- 所得(ご主人):4,350,000
- 課税所得(ご主人):2,873,000
- 所得税(ご主人):193,700
- 住民税(ご主人):287,300
- 国民健康保険料(世帯全体):600,486
- 国民年金保険料(世帯全体):396,480
- 所得(奥様):450,000
- 課税所得(奥様):0
- 所得税(奥様):0
- 住民税(奥様):0
- 計(所得税+住民税+保険料):1,477,966
給与なしのケースと比較して、税金等が225,782円も小さくなりました。
給与所得控除55万円の影響で、所得・課税所得が小さくなるため、世帯全体での所得税・住民税が抑えられます。
青色事業専従者の場合、奥様に給与所得控除が適用される一方、ご主人に配偶者控除は適用されません。
控除額について給与所得控除の方が大きいので、青色事業専従者の方が有利でしょう。
なお、事前の届出が必要です。忘れずに提出しましょう。
また、国民健康保険料の計算において、配偶者控除は控除してくれませんが、給与所得控除は控除してくれます。
従って、国民健康保険料も小さくなります。
給与300万円:40万円以上もメリット
ご主人が奥様に給与を300万円支払うケースです。
- 所得(ご主人):2,350,000
- 課税所得(ご主人):958,000
- 所得税(ご主人):48,900
- 住民税(ご主人):95,800
- 国民健康保険料(世帯全体):515,249
- 国民年金保険料(世帯全体):396,480
- 所得(奥様):2,020,000
- 課税所得(奥様):1,540,000
- 所得税(奥様):78,600
- 住民税(奥様):154,000
- 計(所得税+住民税+保険料):1,289,029
給与なしのケースと比較して、税金等が414,719円も小さくなりました。
給与100万円のケースと比較しても、188,937円の効果。
税金等を抑制できた理由は、給与100万円のケースと概ね同じです。
給与所得控除が更に大きく98万円となったこと、ご主人に適用される所得税率が5%と低くなったことが、より効果が大きく生じた要因です。
まとめ
個人事業主の所得分散のメリットを実感して頂けましたか?
会社員の社会保険の扶養メリットはありませんが、十分にメリットがあることをご認識頂けたのではないでしょうか。
今回は所得600万円のケースについて検討してみましたが、個人事業主より法人にした場合のメリットの方が更に大きいかもしれません。
内容についてご相談したい場合には、お問い合わせフォームからお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
給与300万円のケースでは、ご主人の所得(青色申告特別控除65万円の控除前)が300万円。
個人事業税は290万円を超過した分に生じますので、10万円だけが計算の対象。つまり、殆ど税額が発生しません。
前提として事業税を無視する扱いとしていますが、ここでも所得分散のメリットが生じています。