会社員も節税したいですよね。
残念ですが、有効な節税の方法は殆どありません。
でも、だからこそ限られた節税手法を使い切りましょう!
ご参考になれば幸いです。
「所得控除」が増えれば、税金が小さくなります。
年末調整で申請できるもの、確定申告でしか申請できないもの、があります。
後者は医療費控除、雑損控除、寄付金控除。
年末調整で申請できるものも含めて、記載を漏らしている(損している)ケースが散見されます。
所得控除の種類によりますが、本人だけでなく、親族に係るものも控除対象となり得ます。
申請できるものは、きちんと申請して、適正な税金だけを払いましょう。
あらまし
前述の通り、会社員の効果的な節税方法は少ししかありません。
具体的には以下です。
- ふるさと納税
- iDeCo
- NISA
ふるさと納税は有名ですね。これは殆どの人にとって有効な方法です。
一方で、iDeCoとNISAは万人にとって有効とは言い切れません。
それでもメリット・デメリットを把握してもらえれば、メリットの方に旨味を感じる方も多いのではないでしょうか?
ふるさと納税
概要
有名ですが、意外と使っていない人もいる「ふるさと納税」。
簡単に内容をお話します。
「ふるなび」などのサイトで商品(返礼品)を購入(寄附)します。
例えば、15,000円のカニに寄附したとします。
同等のカニを(ふるさと納税でなく)普通に購入すれば、4,000円程度。
15,000円は寄附金の額であって、カニ自体の価格ではありません。
15,000円はカニの購入先の自治体(例えば北海道)に寄附されますが、
あなたが住む自治体(例えば東京都)の翌年の住民税が15,000円だけ低くなります。
正しくは、年間2,000円を負担する必要はありますので、
2,000円(=▲15,000+4,000▲2,000+15,000)
を得したわけです。
もし、同じカニを2つ購入(寄附)したのであれば、
6,000円(=▲30,000+8,000▲2,000+30,000)
のお得となります。
必ず負担する2,000円を超える返礼品さえ貰えれば、寄附した分だけ得する制度ですね。
例として、寄附金15,000円のカニの実際相場は4,000円としました。
これは、返戻率(=返礼品の通常価額÷寄附金の額)が上限30%とされているから。
実際に25%程度の返礼品が多い感はありますね。
注意①ふるさと納税の上限額
ふるさと納税には上限額が定められています。残念ですが。
つまり、「お得だ~~」と勢い余って、ふるさと納税しまくるのは危険です。
「ふるなび」などのサイトでは控除上限額を試算できるページが用意されています。
上限額を確認した上で、ふるさと納税するように注意しましょう!
なお、上限額を超過した分は純粋に寄附となります。
注意②ふるさと納税の下限額
ふるさと納税を利用した金額の多寡に関わらず、2,000円を負担することは確定しています。
もし、年間で2,000円相当の返礼品しか受け取らない場合、ふるさと納税の効果はなかったこととなります。
返戻率の上限30%を踏まえると、ふるさと納税が8,000円程度であれば、ふるさと納税を利用する意味はないと言えるでしょう。
注意③決済名義
ふるさと納税の利用者に注意しましょう。
納税者本人の名義である必要があります。
例えば、ご主人が納税者(ふるさと納税を申請する)・奥様が専業主婦の場合、ふるさと納税の利用者は、ご主人である必要があります。
奥様が返礼品を選択する場合、誰の名義で購入するのか、注意してくださいね。
注意④確定申告 or ワンストップ特例
会社員は通常、年末調整すれば税額が確定するため、確定申告する必要はありません。
でも、ふるさと納税は原則、確定申告する必要があります。
とは言え、簡単に申告できるので、あまり心配しなくても大丈夫。
また、ワンストップ特例を使用する場合、確定申告は不要です。
ただし、寄附先の自治体は5つ以下であることが要件です。
また、寄附ごとに「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に提出する必要があります。
もし寄附先が6つ以上になった場合は、結局、確定申告しないといけません。
個人的には、ワンストップ特例より確定申告の方がオススメです。
国税庁「確定申告書作成コーナー」で簡単に確定申告できますから。
注意⑤ふるさと納税サイト
ふるさと納税のサイトは、いろいろ。
ふるなび、さとふる、ふるさとチョイス、楽天ふるさと納税、他いろいろ。
返礼品が目的なので、それぞれのサイトで検索してみましょう。
ただし、同じ商品でも寄附金の額が異なるケースも。
返礼品が決まれば、他のサイトと比較するといいでしょうね。
私自身は楽天経済圏の住民なので、楽天ふるさと納税のポイントも考慮しています。
でも、あくまでも返礼品ありきです!
注意⑥一時所得
多くの人には無関係です。ネタとしてご紹介。
税理士法人に勤務時代、あるお客様よりレターパック2つが届きました。
中身は全て、ふるさと納税の証明書。総額150万円程度でした。
返戻率30%として計算すると、45万円。
他に一時所得がないお客様だったので、追加税額は発生しませんでした(一時所得の場合、50万円までの収入は無税)。
追加税額が発生することはあり得ますので、ご注意を!
(ふるさと納税に150万円を回せるほど、稼ぎたいですね。。)
iDeCo(イデコ)
通称iDeCo(イデコ)。堅い言い方は「個人型確定拠出年金」。
掛金を支払うと、将来、年金(または一時金)として返ってきます。
iDeCoのメリットは以下の3つ。
- 掛金は所得控除(毎年の税金が減る)
- 運用益は非課税(普通に株式投資信託を購入すると運用益は約20%。これが無税)
- 受け取る年金/一時金は税制優遇(退職所得または公的年金等控除)
入口(支払)から出口(受取)までメリットが設けられています。
メリット①掛金は所得控除
支払った掛金は所得控除の対象です。その分、所得税・住民税が小さくなります。
具体例で考えます。
例えば、会社員で年収500万円の人は税率20%、年収800万円の人は税率30%程度が一般的です。
また、会社員の掛金上限は月額12,000~23,000円であり、ここでは、掛金20,000円と仮定します。
このとき、年間24万円の掛金となりますので、
年収500万円の人は20%を乗じて、税金48,000円がお得、
年収800万円の人は30%を乗じて、税金72,000円がお得、というイメージ。
上記は1年間のお得額。継続するだけ、お得な額は増大しますね。
メリット②運用益は非課税
iDeCoの運用商品は、定期預金や株式投資信託など。
例えば、(iDeCoやNISAでなく)普通に株式投資信託を購入した場合、最終的な売却益には約20%の税金が発生します。
iDeCoは非課税。20%の税金が発生せず、売却益が丸ごと年金/一時金として戻ってきます。
メリット③年金/一時金は税制優遇
将来の受け取り方は年金または一時金。
残念ながら、受け取る際に税金が発生する可能性は大いにあります。
ただし、年金には公的年金等控除、一時金には退職所得の税制優遇が設けられているため、一般には入口~出口トータルで見たとき、お得の方が上回ります。
ここでは、後者、一時金で受け取る方にメリットを感じる人が多いので、一時金の具体例をご紹介。
退職所得のメリットは大きく2つ。1つは退職所得控除があること、もう1つは1/2換算してくれること。
あえて前者のメリットが生まれない場合を考えます。
例えば、勤続年数30年間、会社からの退職金1,500万円。
iDeCo一時金も同時受取。月額掛金20,000円を20年間払い続けて、運用益ゼロ(メリット小さい仮定とするため)とすると一時金480万円。
このとき、会社の退職金だけで退職所得控除の全額を使い切ります。iDeCo一時金には退職所得控除の恩恵を受けられません。
その場合でも入口~出口トータルでメリットがあると言えるでしょうか?
このときの税金は約38万円(所得税14万円、住民税24万円)。これは全てiDeCo一時金に対して発生しています。
掛金を拠出している20年間ずっと税率20%と仮定すると、所得控除のメリットは96万円(=48,000円×20年)。
出口で税金38万円が発生しているので、トータルでは58万円のお得な結果となりました。
今回の例は、あえて控えめ(お得額が小さく出やすい)にしています。
例えば、
所得がより大きい人の場合、所得控除メリットはより大きいですし、
運用がプラスで回せれば、一時金の受取額はより大きいですし、
会社の退職金が少なければ、iDeCo一時金でも退職所得控除メリットを享受できます。
つまり、今回の例より大きなメリットを得ることができますね。
デメリット(資金拘束性)
iDeCoの最大のデメリットは資金拘束性。
払った掛金は原則、途中で戻ってきません。60歳(今後はもっと延びるかも)まで待つ必要があります。
想定していなかった事態が起こって、キャッシュが急に必要となっても、iDeCo掛金は預けっ放し。
解約してキャッシュにすることができません。
資金拘束性はiDeCo最大のデメリットです。
一方で、これをメリットと見ることができる場合もあります。
収入があるだけ使い切ってしまう人、周囲にいませんか?
更には、収入が減っても、(借金せず)減ったなりに生活できる人。
こういうタイプには、資金拘束性のあるiDeCoは将来のためにオススメと言えるでしょう。
注意点(金融機関・投資商品)
iDeCoを取り扱う金融機関は数多くあります。
また、それぞれ取り扱う金融商品は異なります。手数料の高いもの・運用の悪いもの・リスクの高いもの、それぞれです。
運用益が非課税であることがiDeCoメリットの一つですが、悪い商品を選択して運用「損」とならないことに注意しましょう。
金融機関・投資商品はきちんと精査することをオススメします。
【参考】企業型DC(マッチング拠出)
企業型DCについても簡単に。
こちらの堅い言い方は「企業型確定拠出年金」。
iDeCo同様に「確定拠出年金」ですが、iDeCoは「個人型」、企業型DCは「企業型」。
iDeCoは原則、従業員が掛金を負担するのに対して、企業型DCは原則、会社が負担します。
ただし、企業型DCは例外として、マッチング拠出できる場合があります。
この場合、会社負担分に追加して、従業員自身も掛金を拠出できます。
iDeCoとマッチング拠出の併用は不可のため、いずれかの選択。
確定拠出年金のメリットを最大に活かしたい人は、どちらが多くの掛金を自己負担できるのか、確認すると良いでしょう。
また、どちらが魅力ある投資商品を提供されているのかにも注意しましょう。
NISA(ニーサ)
2024年から改正されるNISA。
年間で投資できる枠が拡大されますし、非課税での保有期間は無期限に。
従来より使いやすくなることは間違いありません。
メリット(運用益は非課税)
iDeCo同様に、運用益は非課税です。
また、iDeCoと異なり、資金拘束性がありません。つまり、いつでも売却してキャッシュに戻すことが可能です。
一方で、iDeCoのような、所得控除や退職所得のようなメリットはありません。
注意点
NISAはあくまでも投資。
増えることもあれば、減ることもあります。
増えた場合に恩恵を受けられることは事実ですが、減るリスクも承知した上で始めましょう。
iDeCo同様に、取り扱う金融機関・投資商品は多彩です。
投資初心者の方は、特に慎重に選択しましょう。
「小規模企業共済」
一般の会社員は小規模企業共済に加入することができません。
一方、会社役員などは小規模企業であること等の要件を満たせば、加入することが可能です。
小規模企業共済もiDeCo同様に、所得控除や退職所得の恩恵を受けることができます。
加入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
会社員の節税についてまとめました。
一番のオススメは、ふるさと納税。ただし、上限額には十分に注意してください。
iDeCoとNISAはデメリット・注意点を認識することは必要ですが、魅力を感じた方は是非はじめてみましょう。
インフレが進んだ場合、(利率が改善しない限り)預金の実質価値は目減りしていくわけですからね。
今回の記事が参考になれば幸いです。
内容についてご相談したい場合(会社代表または個人事業主に限ります)には、お問い合わせフォームからお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
会社員の多くは、年末調整で税額が確定します。確定申告の必要はありません。
年末調整の書類を記入ミス(漏れ)すると、余計な税金を払うことになりかねません。
今回の記事では年末調整について記載しませんが、以下も参考にして頂ければ幸いです。